04
── やはり、高密度結晶の方が早く底をつきそうだ…。先日のカラクリ石及び高密度結晶盗難事件のお陰で、研究所の在庫が尽きるのは思いの外早かった。八雲や刀也が鬼の手を使い始めた事で近衛やサムライたちにも段階的に支給を始めたからである。隊員たちへ「はいどうぞ」と鬼の手を渡し、即時実戦投入という訳にはいかないので、鬼の活動が弱まっている今量産体制に入り、多くのモノノフに使わせ隊の練度を高めねばならなかった。カラクリ部隊の様にああしてすぐに使いこなせる輩は稀である。しかし悲しきかな、現状は監視用にピコを常時起動させているお陰もあり、材料不足で鬼の手の制作もままならない状況だ。得に高密度結晶はカラクリ石の性能を維持する燃料だ。石に対して減りは倍である。
博士は、一人研究室で唸ると手首に向かってつぶやいた。
「誰か聞こえるか。手の空いている者は返事をくれないか」
おもむろに手の甲から声が発せられ、夜勤明けの椋は飛び起きた。反動で部屋の箪笥が揺れ飾られていた甲冑が僅かにがたっと音を立てる。やはり突然の通信は何度経験しても慣れない。己が手から他人の声が聞こえるのはやはり妙な感じだ。
手に向かって「聞こえます博士」と答えると、博士は目的の人物が応答したことで「丁度良かった」と満足気に返した。
「高密度結晶が足らないんだ。すまないが、取りに行って貰えないか。新しい分布図は今ピコに持たせる── 持たせた。受け取ってくれ。あるだけ取ってきて貰えると有り難い」
「わかりました。行ってきます」
「非番のところすまんな…。よろしく頼む」
異界へ赴く支度をしていると、早速戸口にはピコが立っていた。「モッテキタ」と一言告げ、椋はかがんで分布図を受け取った。
里が識に乗っ取られ、緑の寄る辺へ身を隠していた際、結晶の燃料切れで時継が動かなくなったことがあった。以来、カラクリ石や高密度結晶の採取は椋たちが引き受けている。分布図を頼りに結晶を探しに行くのはもう慣れたものだ。今回はどの辺りだろうかとピコから預かった地図を開いてみると、一枚は牛車の雅道から羅城門までの図、もう一枚はカラクリ門周辺の図だ。地図と一緒に博士からの伝言も挟んであった。
- 分布図を預ける。必要な場合は右京の拠点へ行け。頼んだぞ。(博士)
「ありがとうピコ。博士によろしくね」
「ツタエル」
大きな笠に隠れそうな小さい後ろ姿を見送り、椋は同行してくれる人がいないか本部へ出かけた。
中へ入ると、相馬と八雲が長机につき何やら難しい顔をして話込んでいた。椋に気づいた八雲はこっちへ来いと手招く。眉間に寄った皺は話の深刻さを物語り、幾分疲れているように見受けられた。椋は声を抑えた。
「何かあったんですか?」
「…何も無いから問題なのだ」
相馬が眉を下げ続けた。
「あれから、窃盗犯の尻尾は全く分からん。もしかするともう里を出ていってしまったのかもしれない」
八雲は紅月の了解を得て近衛で捜査部隊を編成した。隊は研究所に住む博士を始め、時継、グウェンに当時の状況を聴取し、博士宅周辺に手がかりが残っていないか調査を行ったのだ。
「だがさっぱりだ。犯人を取り逃がしたとなればこれほどの屈辱は無い…っ」
どうにも、先日の盗難事件はかぐやにも聞き及ぶところとなっていた。
岩屋戸に住まう彼女は普段なら外へ出ることが許されないが、彼女は八雲の目を盗み、しばしば博士宅へ続く抜け道を使ってお忍びで岩屋戸を下りていた。その際、盗難事件のことを知ってしまったのだ。かぐやが里を案じ「早くその者が見つかればよいな」と八雲を気遣ったともなれば、近衛として仕える彼が躍起に、いや奮起するのも無理はない。
八雲はため息をつくと、机に広げた冊子へ視線を戻した。先程から相馬も同じものを広げている。
人の名がずらっと書かれてあるそれは、里を出入りする者の帳面だ。里外の者のみならず、門を潜った際は受付で名を記帳する決まりになっている。帳面の筆跡がばらばらなのはその為だ。
八雲と相馬は、清麿が里に文を出した日を境に五日前後の人の出入りを調べているらしかった。二人の傍らには、霊山からの手配書がある。照らし合わせて居るのだろう。
だが受付には椿も居る。事務方が見落とすとは考えにくい。そう言うと、八雲は答えた。
「馬鹿を言え、霊山からマホロバまで手配書が届くのに、一体いくつの役所を通ってくるか。届いた頃には既に捕まっていたというのは日常茶飯事だ」
「確かにな」
相馬は若干苦笑いをしている。一頁捲った時、相馬が口を開いた。
「そういえば、椋。お前はここで何をしている。非番ではなかったのか」
「博士から高密度結晶を取ってくるよう頼まれたんです。それで、同行してくれる隊員を募ろうと」
「成る程な。もうすぐ終わる。俺も行こう。八雲、貴様はどうする」
顔を上げた八雲は咳払いをすると、落ち着き払うよう努めている。だが頬には喜ばしい気持ちが垣間見えた。
「貴様らを手伝いたいのは山々だが、生憎私はかぐや様に呼ばれているのだ。すまんな」
「…と、なれば、誰が別の者に声を掛けるか」
その時、妙に里の入口が騒がしくなった。椋は何事かと本部から外を覗いてみる。
街道入口の門前では両門に立つ近衛の門番の他に、一人のサムライ隊員が両膝に手をつき肩で息をし、切羽詰まった様子で門番らに何かを訴えていた。サムライ隊員は身振り手振りで話し続けているが、門番の一人が、矢も楯もたまらずといった様子で本部に駆けてくる。近衛は走りながら本部へ叫んでいた。
「増援を、増援を頼みます…っ!異聞右京の拠点付近で工作部隊が鬼に襲われ、現在、刀也隊長の部隊が応戦中とのことです。負傷者多数。至急増援願います…!」
穏やかだった本部に緊張が走った。切迫した状況に事務方も驚きを隠せず手が止まっている。受付に居た椿は、冷静に負傷者の受け入れ態勢を整えるべくすぐに各方面へ指示を出していた。椋は荷と得物をひっ掴むと、本部に響き渡るよう声を上げた。
「先鋒を行きます!用意のできた待機員は後続隊に加わって下さい。職務中の隊員はそのまま続行をお願いします!」
帳面を眺めていた相馬も顔つきを変え、椅子から立ち上がると八雲に言った。
「八雲、俺達の後続と医療隊だ」
「言われなくても分かっている!くそっ、あのサムライ。生きているのだろうな…」
「現地の状況は追って鬼の手で報せる。後続隊の編成と投入は任せたぞ」
相馬も椋の後を追い、本部を出た。
跳界石のある拠点に到着早々、椋と相馬は悲惨な光景に目を疑った。拠点の結界範囲内にはサムライ隊員と工作部隊が数名倒れている。結界に入る前に力尽きた者や、竈に生気無く体を預けている者もいた。
東屋の柱に寄りかかる隊員が椋と相馬に気づくと、ようやく来た助けに顔が歪んでいた。二人はすぐに駆け寄った。大の男が声を震わせ安堵と嘆きを呟くくらいだ。余程厳しい状況だったのだろう。隊員は腕を負傷しているらしく、自ら袖を破り、さらしの変わりに巻いているところだったらしい。椋は武器庫の重い蓋を開け薬箱を取り出した。巻きつけていた端切れを取り去り、水瓶から水をすくって傷口を洗ってやる。
痛みに顔をしかめた隊員は「刀也隊長が…」と歯を食いしばりながら呟いた。
「刀也隊長が、俺達を逃してくれたんです…!お願いです、早く、隊長を!」
「落ち着け。何があった」
隊員は頭を抱えながらも話した。
先刻、刀也率いる隊は工作部隊の護衛任務に当っていた。最近は、どの輸送経路にもめったに大型鬼が出没することは無かったが、何故か拠点北方面からゴズコンゴウ、アメノカガトリ、そしてアンクウバッコと、相次いで現れたのだ。勿論、刀也隊は応戦するも護衛任務での戦闘員は最低数だ。工作部隊を退け、退路を確保しつつ、また周辺の小型鬼にも警戒を払いながら戦うには到底太刀打ちできる鬼の数ではない。万事休すと悟った刀也は、自身が囮となり隊員には工作部隊と共に撤退の命を出したのだった。
今この拠点に倒れている者たちは、大型鬼の業火雷電を振り切り、小型や中型の鬼を薙ぎ、掻い潜り必死に逃げてきたらしい。だが小型鬼と一括りに言っても、この辺りに蔓延るのは黄泉のヌエやガキが多く、またムクロマネキと遭遇でもすれば無傷で済まない事も珍しくはない。道中それらに行く手を遮られ、また複雑な道にも撤退は困難を極めたのだと言った。
相馬は「よく生き延びた」と隊員の肩に手を置き励ました。椋が隊員の処置を終えた時、早くも医療隊が拠点へ到着した。八雲の差配はいつも迅速で寸分の隙もない。相馬と椋はこの場を医療隊に任せ、刀也を探しに拠点から北方面へと走った。
朽ちた家屋や壁の間を蛇行し二人は進む。鬼の気配は確かに感じられ、咆哮と瓦礫の拉げる音が次第に近づいた。刀也は一人耐え凌いでいることだろう。無事であってくれと願うもその焦燥とは裏腹に、入り組んだ道はそう簡単に刀也の元へは導かなかった。
「まったく、このあたりは相変わらず迷路だな…。椋、里に帰ったら整備を議題に上げてもいいんじゃないのか」
「そうですね。決裁の下りた暁には工作部隊に頼みましょう。今なら粉々に砕いてくれそうです」
「名案だ」
椋と相馬は迷路を抜け、ようやく開けた三叉路へ差し掛かった。ここから北西方面は墓地があり、真っすぐ進めばカラクリ門と呼称されるカラクリ遺跡がある。東側は大門がある。椋と相馬は背合わせに、神経を研ぎすませぐるりと周囲を見渡した。四分の一、二分の一、四分の三…と体を捻りどこだ、どこだと目を凝らす。分秒を争う状況に焦燥が二人の心臓が掴んでいた。その時、北東方向で轟音が響いた。建物の屋根が潰れ粉塵が上がったのだ。
「行くぞ、椋!」
相馬が先陣を切った。埃が舞い上がる場所は寝殿と中門廊に近い造りの建屋がある。古くは貴族の屋敷だったようだが、なにぶんあの辺りは瘴気による時の歪みの影響からか、建物は大きい割りに一区画がやけに狭い。そんな場所での戦闘は暴れ狂う大型鬼を相手にするどころか、無尽に頭上から降ってくる瓦礫を避けるだけで精一杯だ。
二人は棟門付近まで来ると得物を構えた。入口を挟み両脇の柱にそれぞれ別れ、塀に背を付けそっと中の様子をうかがった。隊員はゴズコンゴウ、アメノカガトリ、アンクウバッコの三体が現れたと言っていたがやけに静かだ。目で合図した相馬は先に敷地内へ入った。ところが、目の前の光景には椋も我が目を疑った。アメノカガトリとアンクウバッコは絶え果て、双方の羽と足は互いの胴の上に積み上がっている。刀也が一人で討伐したことに疑う余地は無いがそれにしても正面突破をやってのけるとは無茶が過ぎる。相馬は闘争心を煽られたのか「あやつめ」と呟くと、崩れ落ちる瓦礫へ向かって言った。
「刀也!」
残るはゴズコンゴウだけのはずだ。声を上げれば鬼を此方に注意を引きつけられる。アメノカガトリとアンクウバッコを討伐した後では、いくら刀也が屈強なサムライ部隊長といえども既に体力は限界近いだろう。
相馬は尚も威勢よく叫んだ。椋も続いた。
「刀也さん!応援に来ました!」
「このくらいでくたばって貰っては困るぞ!もうしばらく堪えろ!」
のっそりと、建屋の後ろからゴズコンゴウが頭を上げた。左右不揃いな角を振り上げ、むき出しの牙からは唾液が溶けた鉄のように垂れる。黄色に光る目が椋と相馬を捉えると、ゴズコンゴウは廊下を踏み潰して此方へ向かってきた。隣に立つ相馬はまだ動かないが、金砕棒はいつでも振り回せる様子だ。堂々たる構えに椋は手に汗握った。
「椋、いいか。ぎりぎりまで引きつけたら左右に散るぞ。鬼に一瞬隙ができる。そこを挟み撃ちだ」
「分かりました」
ゴズコンゴウが一歩また一歩と踏みしめる度に、地響きを立てる。
僅かに生えている雑草も鬼の持つ豪炎の力によって踏み潰され瞬時に灰になった。
じわじわと距離を縮めその隔たりは大凡十間ほどだ。椋は相馬を一瞥した。相馬は「まだだ」と呟く。焦ってはだめだと言い聞かせるも、ゴズコンゴウの通った後を見れば嫌でも先手を仕掛けたい衝動に駆られる。だが連携し手早く仕留めなければ刀也も心配だ。そうこう考えている間に、その距離はあと一間と迫っていた。見上げれば鋭い爪が目と鼻の先だ。ゴズコンゴウは手にする棒を大きく振り上げた。椋は無意識に身が竦む── と同時に相馬が号令を駆けた。
相馬は向かって右側へ走り素早く腕を吹き飛ばし二撃目を繰り出そうとしていた。ところが椋は出遅れていた。
得物を握りしめゴズコンゴウの側方に回り込むも焦るあまり間合いが上手く取れず、抜刀するも一撃目の切っ先が届かない。一気に青ざめた。向かいで相馬が逃げろと叫んでいるが既にゴズコンゴウは片足を上げ、四股を踏んでいた。椋の頭上は瞬時に影になった。一薙ぎすれば足を奪えると思い、椋は落ち着けと言い聞かせ柄に力を込めた。一点集中し精神を練り上げる。
しかしその視界は椋が動くよりも先に広々と開けていた。ゴズコンゴウの足はまっすぐに切断され吹っ飛び、哮りながら倒れた。すかさず相馬が脳天目掛け金砕棒を垂直に落としに掛かる。頭骨の潰れる音と共に角は折れ、ゴズコンゴウは動かなくなった。
相馬は、片足を頭部に乗せたまま金砕棒を担ぎ「待ちわびたぞ」と言って笑っている。椋は恐る恐る後ろを振り返った。そこには刀也が立っていた。愛刀を一振りして鬼の体液を払い、何事も無かったかのように静かに納刀した。が、またすぐに鯉口を切った。ちゃきと鍔を鳴らし椋を鋭く視界に捉えた。
「椋、貴様は帰ったら稽古をつけてやる。剣士が間合いを見誤るとは笑止千万。覚悟しろ」
「まあ、そう言ってくれるな!椋は一番に里を飛び出したぞ。しかしお前も無茶をしたな」
「俺がやるしか無かったん、でな…」
呟いた刀也の言葉尻は力無く、ふらっと体が傾いた。椋は慌てて正面から刀也を支える。相馬も駆け寄り刀也に肩を貸した。
「全く、何が稽古を付けてやるだ。貴様の休養の方が先だな」
「そうだな…。二人とも、礼を言う。隊の連中は無事か」
「八雲さんが、医療隊を直ぐに出してくれたので、任せています」
「そうか、ならばよかった」
相馬と椋は刀也を抱え、拠点へ戻ることにした。しかし刀也の歩みはぎこちない。足を挫いているらしく進む度、痛みに顔をしかめていた。三人はゆっくり棟門へ進んだ。
ところが突然「ぎゃあああ!!!!」と、断末魔のような叫び声が聞こえたのである。椋は思わず肩が跳ね、皆々顔を見合わせた。今の絶叫に驚かない訳がない。討伐を終えたばかりだというのに、こうも畳み掛けられては体がいくつ合っても足りない。
様子を見てくると言い、刀也を椋に預けた相馬が門を潜ろうとしたその時、正面に捉えた門の、その切り取られた枠の中を男が二人全速力で横切った。その後を黄泉のヌエが一体過ぎ去った。
一瞬の出来事は、まるで棟門が紙芝居を披露しているかの様だ。北から南へと逃げ惑う野太い声は尚も「助けてくれえええ!!」が止まらない。ぽかんとしていた相馬は、いかんいかんと頭を左右に振り、助けを請う方へ駆けていった。
しかしヌエを仕留め、相馬が助け出した男たちはどういったわけか、まるで相馬に捕らえられたような有様だ。何らかの罪でも犯したかのようなその扱いに椋も刀也もわけがわからない。塀に寄り掛かる刀也は「助けた者たちだろう」と聞くも相馬は首を振った。
「こやつら、近くの屋敷をねぐらにしている盗賊連中だ。里の者でも、行商人でもない。遺跡に無断で入ろうとしていたのが何よりの証拠だ。おい、貴様ら、そうだな」
相馬に首根っこを押さえ付けられた男二人は謝りながら肯定した。
「すんません!そうです!そうです!だって…そんなもん置いてあったら、入りたくもなるでしょう?!」
「そうでさぁ!そんなもん見つけて物盗りに入らねえなんざ盗賊の風上にも置きゃしねえや!」
「何が風上にも置けないだ。それはお前らだ馬鹿者」
気の抜けるやり取りに、椋は乾いた笑いしか出てこない。しかし、刀也は幾分真剣味を帯びた様子で相馬にたずねた。
「こいつらの言う“そんなもん”とは何のことだ」
相馬は一枚の紙切れを差し出した。
- 『異聞右京、遺跡に財宝有り。我と思わん者いざ行かん』
「何だこれは」
「なんでも遺跡には財宝が眠っているらしいぞ。俺はそんなこと一度も聞いたことはないがな」
「盛大な法螺ですね…」
三人とも遺跡へは調査で入ったことがあるが、財宝が眠っているなど博士からは聞いたこともない。せいぜいあるのはカラクリ石と動かなくなった量産型ピコくらいだ。
「まったく、こんな紙切れ一枚で騙されるとは年貢の納め時だったな。大人しく観念しろ」
「マホロバ管轄内での略奪行為は里で罰するのが決まりだ」
男二人は「そんなぁぁ」と女々しい声を上げ脱力し、相馬、刀也、椋の三人は二人を拠点まで連行した。
既に拠点には大勢の応援が集い、医療隊は負傷者の治療をほぼ終え、後続隊は周辺の検分を始めていた。
罪人を守備隊に引き渡した相馬は、今一度盗賊たちから押収した紙切れを眺めていた。よくよく見ると、紙の端は僅かに焦げた跡がある。
しかしこんな紙切れ一枚で騙される方も騙される方だが、一体誰が、何の目的があって遺跡に宝が眠っているなどという一文を盗賊のねぐらへ放ったりしたのか疑問に思った。
怪訝そうな相馬に、椋は声をかけた。
「気になることでもありますか…?」
「いや、根拠もない紙切れを信じるものかと思ってな」
「確かにそうですね」
「にしても、この…」
相馬は言いかけて口をつぐんだ。椋は首を傾げるも「いいや、何でもない」そう言って相馬は紙切れを守備隊に預けた。
こうして工作部隊の襲撃は重傷者は出たものの、一人の死者も出すこと無く幕を閉じ、高密度結晶の採取は改めて行うこととなった。