暁の残灯episode.02
手伝いとやらの詳細を聞かぬまま当日を迎えていた。研究所の職員が部屋を訪れたのは早朝、長い廊下を連れられ案内されたのは大きな扉の正面だった。重厚な鉄製の扉にはモノノフ紋が刻印され、中央部には人の頭ほどの丸い取っ手がある。職員が右回りにひねると、扉は鈍い音を上げ観音開きに開いた。
薄暗い室内はぼんやりと青い光りが漂い、壁から天井までは全て鋼鉄の板で覆われている。窓一つ無い。
数名の職員が壁際の作業台に向かい、何かの欠片をつなぎ合わせているのが目に入った。静かな部屋で黙々と作業をする光景はまるで工場のようにも思える。
そして部屋の中でも、最も異様な存在感を放っていたのは、中央に置かれた不釣り合いな造形物だった。床から一段上がった台に、朱里の背丈ほどはある大きな正円の輪が垂直に立っていたのだ。台の四方には翡翠色に光る丸い石が配され、部屋の光源となっている。この空間が妙に青々としていたのはこの石が原因らしい。
不思議な輪と石に目を奪われていると部屋の影から識が顔を見せた。薄く笑みを浮かべ朱里を歓迎し腕を広げた。
「朱里、よくきてくれた。こちらへ掛けたまえ」
入口付近に立って居た朱里は促され引かれた椅子に腰掛けた。職員は親切にも朱里に茶を出してくれた。青白く染まる湯気を挟み、正面には識が腰掛ける。飲みなさいと勧められ一言ことわり口に含むが、今まで飲んだことの無いなんとも言えない風味が口内に広がっていた。茶の割りには甘い香りが鼻を抜ける感覚に襲われていた。次第にふわふわとした心地になり、朱里は頭がぼんやりとし始めた。識は手を組むと、不気味に反射した片眼鏡の奥から朱里をまじまじと眺めた。
「さて、いくつか質問をしよう。まず朱里の身体には何らかの細工が施されている筈だ。それが何か答えてくれるかね」
浴場で会話をしているかのように識の声が揺らいでいた。残響に頭を揺さぶられ酩酊した様な気分になりながらも朱里は必死に意識を保った。
「何をおっしゃっているのか…、わかりません」
「ならば、質問を変えよう。トキワノオロチ。この名を聞いたことがあるはずだ。それが今何処に眠っているか私に教えてくれ」
「…わかり、ません」
すると、職員は再び識に命じられ朱里の湯呑みに茶を注いだ。
朦朧とする意識の中朱里は茶を何杯も飲まされ、識は同じ質問を繰り返していた。勿論どんな必要があってそれらを問われるのかは分からない。
診察とも違う単調で執拗な問いが延々と続き、仕舞いには識の声と自身の声との判別すらつかなくなっていた。手先に力が入らなくなり湯呑みは滑って割れ、中身は床に溢れる。既に含んだ茶は喉に通すことが出来ぬまま、朱里は口端からはだらだらと茶を溢し着物に染みを作っていた。
識は腰を上げ朱里を覗き込んだ。上下の瞼を指で押し開き瞳孔を確認する。頬を軽く叩くも反応は薄く、焦点も合っていない。今しがたまで壊れ物を扱うかのように彼女へ接していたというのに、今の識は酷く彼女に冷たかった。まるで汚らしいものでも見る目つきに変わっていた。
「まあ、最初はこの程度のものか。とはいえ随分と軟弱な…。食事にはきちんと混ぜていたのだろうな」
「はい毎食。しかし薬剤耐性を考え茶に入れた分量が少々多過ぎたのかもしれません。申し訳ありません調整いたします」
「そうしてくれ。まあ、時間はたっぷりある。娘の体を調べ尽くさんとな」
朱里の食事には、今日の為に毎日少しずつ自白剤を混ぜていた。朱里が比較的早い段階で識へ好意的になったのもこの薬による作用が大きい。薬の効果は投与者と特別に多く接する者に信頼を寄せ、その者の問いには素直に答えるという単純な作用だ。
ぐったりと項垂れ椅子に座る朱里は、職員に抱えられ別室へと移された。寝台と机、椅子があるだけの狭い部屋は、壁面には拘束具が備え付けられ、内側からは扉が開かぬよう取手が取り外されている。まるで牢のような部屋だ。
冷たい寝具の上に職員が寝かすと、識は傍らに腰を下ろした。
「朱里、まだ何も答えてはくれないな、ん?今は口も聞けるだろう、話してみたまえ」
虚ろだった朱里は識へ顔を向けた。視線はしっかりと識を捉えている様子だが、胸は大きく上下している。呼吸が不規則になっていた。
「識、さま…私なんで、胸が、息が苦しい…」
「答えれば楽になる。先ず知りたいのは朱里、貴様の身体についてだ。知る限りを全て述べろ」
「分からない…、わたしわからない…っ!」
途端に朱里は急に胸をかきむしりもだえ苦しんだ。自身で深呼吸を試みるも上手く行かない様子だ。気が狂ったかのように寝台で転がり、枕を破らんばかりに握っている。控えていた職員が副作用ですと呟いた。見かねた識は朱里の肩に触れた。
「朱里…そうだ、帯が苦しいだろう」
頭を振る朱里に構わず識は帯に手を伸ばした。手慣れた手つきでするりと解くと、腰紐も全て取り去り朱里は襦袢一枚になる。彼女の顔は赤らんで、今にも涙をこぼしそうだ。羞恥に耐えかねたのか、胸が苦しいと言いながらもうつ伏せになる。だが圧迫され余計に辛かったのだろう。直ぐに識に背を向け横になった。朱里は益々息が荒くなる。
職員は再び識へ声を掛けた。
「…識様、こちらに置いておきます。何かあればお使い下さい」
職員は机の上に小瓶を置いた。睡眠薬だった。識は振り向かずに答えた。
「ご苦労、もう下がれ。明日の用意をしたなら貴様らは帰るがいい」
甲高い音を立て扉が閉まった。足音が遠のくと、識は朱里の耳元に顔を近づけた。若い女の肌のはいつでも良い香りがする。うなじに頭を埋めると、朱里が足をばたつかせた。まだ抵抗する余力があったかと驚いた。彼女は怒りを露わにし識を睨みつけている。だがこのくらいじゃじゃ馬の方が、張り合いがあるというものだ。朱里に覆い被さった識は細い両腕を寝台へ押し付けた。
「いいか、よく覚えておけ。この研究所で私は絶対だ。何人たりとも不可侵。朱里…、この意味が分かるか?」
「いや、…識さま、どうしてしまったのですか…離して、ください…っ」
「貴様が全てを吐けばな。さあ!貴様の身体について知りうる限りを答えよ!」
「本当に何も分からない…。いやっ、識さま…やめ、」
識は襦袢の袂をたくし上げた。指は太腿を遡る。肌を波打つ感覚に耐えられず、朱里は足を閉じようとするも識は体を滑り込ませた。
何故、識に乱暴を受け嬲り者の様にして扱われているのか勿論朱里には一寸たりとも理解できない。
あんなにも穏やかで父のようだった識の豹変ぶりには夢を見ているかのようだった。優しく頭を撫でてくれた手は今や朱里の体を弄り、博学多識を紡いでくれたその口は朱里の乳房や唇を貪っている。胸の息苦しさは益々増すばかりだ。
いつの間にか襦袢も脱がされ一糸まとわぬ姿になっていた。既に抵抗する力は残っては居ない。抱きかかえられた朱里は横になる識の上に跨がされた。上半身は己で支えきれず、自ずと識になだれ込む。耳元で識が呟いた。
「朱里、貴様の食事に混ぜた薬だが、快楽を得てよりその効果がある…」
その言葉に朱里は体が震えた。今にも逃げ出したい気持ちだというのに自由は効かない。識は朱里の反応に愉悦し不敵な笑みを浮かべていた。朱里の腰に手が伸び、少し浮かすと識はそそり勃ったものに押し付けた。圧迫される様な感覚に朱里は堪らず声が漏れる。揺さぶられながら懇願するもその甲斐なく朱里は意識を手放した。
それから日々彼女への詰問は続いた。
食事に薬が混ざっていると知った朱里は、次第に物を口にしなくなった。水は勿論のこと出された食品全てときたからこれには職員も頭を抱えている。見兼ねた識は自身も朱里と共に食事をするようになった。だが何も彼女が不憫に思えたからではない。箸すら手に取らぬ彼女に強引にでも食べさせる為だった。
夕食時、勝手方に握り飯を作らせると、識が手ずから彼女の部屋へと給仕する。部屋へ入ると、朱里は壁の拘束具に貼り付けになっていた。水を浴びせられたのだろう。白い襦袢はずぶ濡れで肌は透けていた。
「いい眺めだ…。ここ数日食べ物を口にしていないそうだな」
朱里は口をつぐんだまま顔を上げた。生気のない女に睨みつけられても痛くも痒くもない。可愛い猫が甘噛する程度のものにしか思えなかった。
「あれこれ考えず、貴様はただ私の為に尽くせばよいのだ。誰がその命を救ってやったと思っている」
識は握り飯をひとつ手にすると、朱里の口元に押し付けた。それでも朱里は耐え歯を食いしばっている。識は無理矢理に彼女の口をこじあけ握り飯を捻るように押し込んだ。潰れた飯粒が朱里の口内を満たしている。
朱里は今なら識の指を噛み切れるかもしれないと思い必死に顎を動かそうとしたが、途端、視界が急に地へ落ちた。識は、拘束する手首の枷を外していたのだ。床に手を付き朱里は咳き込む。傍らにしゃがみこんだ識は、彼女の顎をぐいと持ち上げた。
「まったく…年頃の娘が酷い顔だ。風呂にでも入れてやろうか。米粒で汚れてしまっただろう」
「触ら、ないで…」
「まあそう遠慮をするな」
識は職員を呼び付けると、朱里を風呂場へ連れて行けと命じた。
後ろ手に縛られた朱里は両脇を職員に抱えられ部屋を出る。研究所内は先日より少し明るかった。青い光が薄くなっていた。よく見ると初日にこの研究室へ入ってきた大きな扉が今は少し開いている。隙間から一筋の陽光が誘うように揺れていた。今走れば、との考えが過るも朱里はとうにそんな気概は尽きていた。
石の敷き詰められた薄暗い廊下を行き、地下へ続くらしい階段を下りると普段は宿直の職員が使用しているらしい浴場があった。後に続いてきた識は人払いを命じ、朱里を抱きかかえるとそのまま湯船に沈めた。横たわったまま頭まで沈んだ朱里の襟を掴み、再び湯船の外から引っ張り上げた識は、彼女の濡れた襦袢を脱がしに掛かる。朱里は何度めか分からぬ情事の予感に胸が張り裂けそうだった。
識は襟を胸の下まではだけさせると、どうした理由か急にその手を止めていた。朱里の何かに気づいたらしく首の後ろを脊椎に沿って指でなぞり始めた。暫く辿り、ぴたりと止める。そこにはやけどの様な痕がある。目を凝らせば番号のような文字だった。烙印のごとく押されたそれに識は目を細め、一度問おうと考えるも、おもむろに彼女の唇を塞いだ。いちいち気がかりを問うよりも、合理的に事を運べば良い話である。
握り飯には自白剤を多めに入れていたお陰か、さっきまでの朱里の威勢は消え失せ従順になっていた。湯船の端に襦袢が浮かんでも気にする事は無く、ただただ識に翻弄されていく。
識はいい加減戦士に関する機密を吐き出させたかった。若い女を毎日抱けるに越したことは無いが、朱里の敏感な場所もある程度分かるようになる程には彼女の肌を嗅いでいる。「識様」と呟く朱里は僅かに喘ぎ、湯船の淵にぐったりと体を預け識を見上げた。もう既に二度は達していた。克己心を押さえ付け、識は同じ問いを繰り返した。
「どうだ、少しは思い出したか。貴様の身体にに施されたものは何だ…。思い出せる限り答えるのだ」
朱里が自ら識を求めることなど今まで一度たりとも無かったが、今日は様子が違っていた。だらりと垂れた腕を伸ばし、識の首へ回す。顔を耳元まで寄せると吐息混じりに答えた。
「わたしの、体には、魂を食らう…機関が…」
識は平静を保ち、朱里の背に腕を回し彼女を支えた。
「もう少し詳しく話しを聞かせてくれるかね。もう少し、そうだ、体を預けていい」
「魂喰機関…、が、あります…」
「ほう。ではもう一つの問いはどうだ?トキワノオロチについてだ。何か知り得ないか」
「とき、わ…オロチ…。まほろば、風の吹く丘…、磐座に…」
このまま朱里が耐えきれずに死ぬかと思っていたが、良い方向へ転がりそうである。
魂喰機関とはあらゆる魂を喰らい、閉じ込め、それをモノノフの力と成す機関だ。数万年前の識は、技術研究員時代にその開発過程に携わった経験がある。応用すれば、食らった数多の魂の導きにより空間転移が可能になるという所まで研究は進んでいたが、実験の安全性を考慮し研究は鈍化していた。だが、鬼門が開いた緊急時ともなれば話は別だ。敵国は恐らく魂喰機関の応用技術を戦士たちに使用したに違いない。
更に、トキワノオロチの封印場所はマホロバの里、磐座の封印が鍵だと分かった。早速、部下らに命じ先遣隊を送らせ状況を把握することが必要だ。
識は朱里の頭を撫でた。先刻まで欲を満たす唯の淫売にしか見えなかった女が今は何故か愛おしく感じる。
「結構だ。朱里、褒美をやろうか」
識は朱里の嬌声が枯れるまで一晩中交わった。
後日、早速調査隊を編成しマホロバへ先遣隊を派遣した。また、識はあれだけ朱里に入れ込んでいたにも関わらず、驚くべきことに彼女の身体に埋め込まれた魂喰機関の摘出を行えと職員らに命じた。勿論、今世の職員は魂喰機関など聞いたことも無ければ、ましてやそんな物が人体に埋め込まれているとはにわかには信じられない。だが識は大真面目だった。
「娘の胸を裂いて、魂喰機関を取り出せ。青いカラクリ石と似たような石が入っているはずだ。ただし、赤い色のな。取り出したらまた縫えばいいだけの事。失敗は気にするな。生死は問わん」
何度も摘出手術に確認を取るも、識はさっさとやれとしか返事を寄越さなかった。職員らは命に従い朱里の胸を裂いた。手術台に横たわる彼女からは、識の言った通り、赤いカラクリ石が出てきた。洗浄しその石を明かりにかざせば、赤く透けた中には黒く混濁した靄が煙のようにして不気味に揺蕩っていた。
赤いカラクリ石とやらは、研究所で普段光っている青いものよりも何倍も優れたものであるらしい。識は扱いに気をつけるよう、職員らに命じた。
朱里は幸いなことに命を取り留め、また術後の回復も早かった。これにて彼女もお役御免かと思いきや、識は朱里を手放さなかった。彼女は相変わらず牢のような部屋の中で四六時中過ごし識の情婦になっていたのだ。次第に職員らも同情の眼差しを向けるようになったが、識に意見などできはしない。朱里の鎖が切れるのは、死ぬより他はないだろうと皆そう思っていた。
今日も識が朱里の所へ居ると聞いた職員は、元来研究所で行っていた実験に、新たな兆候が見られた事を報告しに向かった。
この研究所は鬼門を使った時間航行、つまり空間転移の実験を行う施設だ。表向きには、医療研究機関と名乗っているだけである。
空間転移の実験では研究室に配された正円の輪に、鬼門と同等の空間を擬似的に作り出し、様々な物質投入を行いその変化を調べていた。
職員らは家から不用品等を持ち寄り、これまで様々な物を疑似鬼門に投入してきたが、どれも入れれば直ぐに投げ返され、何一つとして鬼門を通り抜ける物は無く戻ってきていたのだ。しかし先日、試しに朱里から取り出したカラクリ石を、四隅のカラクリ石の一つと入れ替え実験してみた所、見事に職員のかんざしが鬼門に飲み込まれ、戻ってこなかったのである。簪を投じた職員は、少々落胆気味だったが何はともあれ研究は一歩前進だった。
だが、その報告に行った職員が仲間の元へ戻ると彼は青ざめていた。識からの命を告げられた職員たちは、皆不安な表情を浮かべつつも研究所始まって以来の、一世一代の実験準備に取り掛かった。
その日、全ての準備を終えた職員らは、識が朱里を連れてくるのを待っていた。
研究室の中央には擬似空間が作り出され、今か今かと待ち構えたかのように円の中は淀んでいる。部屋から出てきた朱里は識に寄り添っていた。ここの所、識は言葉巧みに彼女を掌握していたらしい。言われるがまま、命じられるがまま、既に朱里は識の傀儡と化していた。
足元をふらつかせながら朱里は識とともに台へ上がった。周囲に職員が大勢居ることが不思議でならないらしい。瞳には純粋な不安が揺れていた。識は、朱里を命一杯抱きしめた後、職員の目も憚らず深く口づけを交わした。
「朱里、今宵は良い夢が見られそうだ…」
朱里は体が傾いた。段々と識が遠く小さくなり、周囲が漆黒に包まれると共に自身の脳裏に残る僅かな意識と、記憶が薄れていくのを感じた。始めのうちに感じていた恐怖は無になった。闇の中はあらゆる情景が凄まじい速さで自身の傍らを駆けて行くのが見える。その時、落下する浮遊感を感じていた。内臓が持ち上がる感覚がしばし続いた後、背中に激痛が走り朱里は意識を失った。
どのくらいそうしていたのだろうか。すっかり、自身のことも、何故ここにいるのかも分からずただただ背なの痛みに耐え忍ぶことしかできなかった。仰向けに転がり、見上げる空は高く澄み、青い。何が悲しいのかも分からず不思議と涙が溢れてくる。このまま何も分からぬままに朽ち果てるのだと、思った時、人の声が聞こえた。
地に横たわっているだけあり、足音は直に感じる。数十名ほどの集団だ。蹄鉄の音も聞こえ、次第に伝う音は大きくなってくる。体はびくともしない朱里は仕方なしに横たわっていると、足音は留まり、一人の男性が慌てふためいて駆け寄った。声を掛けられ僅かに笑みを浮かべてみるも、涙を零した痕を残っていてはいくらも説得力は無い。男は、率いる一隊へ声を上げた。
「九葉様!おなごが一人、倒れております。まだ息もございます!」
男の言葉にもう一人の足音が朱里に近づいていた。朱里を真上から見下ろす御仁は、朱色の装束に身を纏った白髪の壮年男性だ。どこか懐かしさを感じるのはなぜだかは分からない。朱里はとうに力尽き思考は止まりかけていた。
過去も行先も分からぬまま、己は一体ここで何をしているのだろう。何故、鬼を討たねばならないのだろう。一人きりで──、そう考えを巡らせると朱里は糸が切れたかのように意識が途切れた。
(終)